株式会社のぶちゃんマン 滝下 信夫 社長
本日はよろしくお願いします。早速ですが、滝下社長の会社は何をしている会社なのですか?
【(株)のぶちゃんマン】は「やる気・元気・笑顔」を大切にしながら、変な人たちがまじめに楽しく仕事をする会社です。家具やお酒の販売、パン屋さんもしているちょっと変わった会社です。
なるほど。ちなみに「やる気・元気・笑顔」を大切にしながら、とはどういうことなんですか?
私は今までの人生の中で「人生は順風満帆ではない」ということを色々経験してきました。そういう人生の中で大切になるのは『気』、つまりエネルギーです。私は今67歳、世間一般的には定年退職をしている歳です。でもこうして元気に働くことができるのは、今までの人生で身に付けることのできた『気』のおかげだと思っています。そして、その『気』を身につける上で大切だと思ったのが「やる気・元気・笑顔」なのです。普通の人には見えない『気』を社員にも身につけてほしいので、その根源である「やる気・元気・笑顔」の3つを大切にしています。
滝下社長は『気』を身につける上で、どうして「やる気・元気・笑顔」が大切だと思うのですか?
私は子供の時、とても内向的な性格でした。気持ちが落ち込んでいる時に「がむしゃらに前を向け」とアドバイスをされても何をどうしたら良いのかわかりませんでした。そこで、立ち上がるためには小学生でもわかる「やる気・元気・笑顔」の3つが大切だと感じました。
なるほど。では「変な人たちがまじめに楽しく仕事をする」の『変』とはどういうことですか?
『変』とは「個性のある、ユニークな」という意味です。その『変』を出し切ることが重要だと思っています。
なるほど。『変』は個性であり、それは強みにもなるんですね。ところで、どういう経緯で会社を創られたのですか?
私の会社の前身は親が経営していた家具屋でした。親の家具屋を受け継いで暮らしていた当時は高度経済成長期ですから、これといった目標がなくても儲かったんです。ですが、バブル崩壊でそういった生活に終止符が打たれました。その時に、主力商品を「嫁入り家具」から「傷物家具」に思い切ってシフトチェンジしたんです。
「傷物家具」に目を付けたんですか。
はい。そこから傷物家具の売り込みでメディアに出させてもらう機会が多くなりました。その一環としてKBS京都でテレビショッピングの元祖のような放送がありました。そこで普通に商品を販売しても売れなかったので、司会の梶子ママ(梶浦 梶子/おネエタレント)の勧めで女の子のような化粧や格好をして出ることになったんです。
嫌じゃなかったんですか?
本当に恥ずかしくて嫌でした。しかし、注射と一緒で嫌でもやらなければいけないという状況でした。そして、押されるようにステージから出ると、スポットライトが当たったんです。その瞬間、内向的だった私の中で何かが目覚めたんです。無我夢中で商品をPRするとスタジオ中が大爆笑に包まれ、結果、放送後に注文の電話が殺到しました。この時、「モノの価値と、売れる売れないはイコールではない」つまり、「人の感情に触れたら、売れる」というのを理解しました。この出来事で「個性のある、ユニークな」という『変』の大切さを知り、私自身も内向的ではなくなって、思い切ったことができるようになりました。そこから2000年に生まれたのが、もう一人の私である「のぶちゃんマン」です。
なるほど。では、そんな滝下社長の会社である【(株)のぶちゃんマン】の強みは何ですか?
ここまで残ることのできた「しぶとさ」が私たちの強みです。
具体的に教えてください。
私たちは今まで常に順風満帆というわけではありませんでした。最初の危機が先ほども触れたバブル崩壊です。そして、二度目の危機がリーマンショックの時です。「のぶちゃんマン」が誕生してからは、メディアの取り上げが殺到し、売り上げも大幅に上がりました。事業内容も引っ越し、リサイクル、リフォーム、パンの製造販売など一気に多角化し、2008年には株式上場を目標に揚げるまでになっていました。有頂天になっていましたね。そこからリーマンショックを機に一瞬で急降下。メディアも「のぶちゃんマン」に飽き、どん底の毎日でした。自分の「気力」で1日を耐え忍ぶのが精一杯でした。しかし、そこから奇跡と呼ぶべき出来事が重なり、今やっと新しいスタートラインに立てるところまで来ることが出来ました。そこには私たちの「しぶとさ」が存在すると思うのです。
なるほど。奇跡と呼ぶべき出来事が気になるので教えてくれませんか?
10億近い負債があり、まさにどん底だった時に、政府が「中小企業金融円滑化法」を定め、その負債の返済期間が5年から20年に延びたのです。それが一つ目の奇跡です。しかし、それは延命に過ぎません。二つ目の奇跡は店舗が水害で駄目になったのですが、適用されないと思っていた保険金が頂けました。三つ目の奇跡は3本の金の延べ棒を持ち込まれたお客様がいらっしゃいました。その当時、金の価格が暴騰していたものですから本当にありがたかったです。他にも、取り込み詐欺の被害に遭い、被害金が戻ってきたということもありました。いくつもの奇跡が重なり、風向きも変わったように感じました。
なるほど。苦労の末、今の【(株)のぶちゃんマン】があるんですね。ところで、今どんな事業をされているのでしょうか?
九州を拠点に50店舗以上を展開する感動の100円パン「京都伊三郎製ぱん」、世界の1000種類以上のお酒をお手頃価格でご提供する「お酒の美術館」、お酒の買取・販売専門店の「ゴールドリカー」、そして昭和二十三年から続くアウトレット家具専門店の「家具の宝島」などがあります。
「お酒の美術館」はどういったものなんですか?詳しく教えてください。
「お酒の美術館」は「世界のお酒をお手頃価格で」というコンセプトでウイスキーを中心に沢山の種類のお酒を用意しています。またファミリーマートさんやローソンさん、ポプラさんなどのコンビニとコラボすることで、「コンビニバー」という全く新しいビジネスモデルを構築しています。
お酒を従来のように居酒屋で飲むという形ではなく、コンビニのようにふらっと気軽に入って、飲むことができるということですね。面白いです!では、滝下社長は【(株)のぶちゃんマン】にどんな人物を求めていますか?
野心のある人物が欲しいです。
どういうことですか?
今、世の中では働き方改革が進んでいます。社員の労働時間が短い時代に仕事の質を上げるには、商売の本来の姿である「生業(なりわい)」の形をとるべきだと思うのです。そこで「京都伊三郎製ぱん」や「お酒の美術館」に独立制度を設けようと計画しております。なので、野心があって独立精神を持っている人が欲しいと思っています。
なるほど。「生業」とは「家業」、つまり家族の生計を自営業で支えるということですね。
そして、そういった野心のある人を、人の感情に訴えかける商売ができる人物に育て、独立開業させたいと思っています。それが私たちのこれからの目標です。あと「のぶちゃんマン」を世界の三大キャラ(ポケモン・マリオ・のぶちゃんマン)にしたいです(笑)。
「人の感情に訴えかける商売」というのは社長ご自身の経験から得られたものですね。ところで野心のある人物をどうやって見極めるのですか?
見極める必要は無いと思っています。というのは、私もそうであったように、人生どこで転機が訪れるかわかりません。私のように40歳過ぎかもしれませんし、もっと早いかもしれません。見極めるという意味では、柔軟性が有るか否かを見るようにしています。
どうしてですか?
柔軟性がなく悪い意味の頑固だったら、人から何も学ぶことが出来ないからです。年代を問わず誰にでも見習うべきことが存在すると思っています。私は40歳を過ぎてから立命館大学経営学部に入りました。若い学生と一緒に勉強し、学食を共にしましたが、見習うべきことはありました。その柔軟さのおかげで今も元気にやれてると言っても過言ではありません。
私も滝下社長と一緒に学校生活送りたかったです(笑)。では最後に、大学生にアドバイスをお願いします。
必須科目など学ぶべきことはちゃんと学んで、あとは青春を謳歌すればいいと思います。
どうしてそう思われるのですか?
大学生活で学ぶことが出来なくても、卒業後に学ぶことが出来ますし、社会人になってから学んだ方が社会との連携が分かりやすいこともあります。何を学ぶべきか、というのはおこがましくて言えません
わかりました。私も大学生活、青春を謳歌したいです!本日は取材にご協力頂き有難うございました。