株式会社花政 藤田 修作 社長

2020年12月1日#生花

本日はよろしくお願いします。早速ですが、藤田社長の会社は何をしている会社なんですか?

花政は文久元年(1861年)から続く花屋です。

(写真:京都の花屋「花政(はなまさ)」 )

花政さんは京都のど真ん中にありますね。最初から河原町三条で店を構えていたのですか?

いいえ、違います。始まりは伏見でした。初代・藤田吉兵衛が京都伏見、立売の地で花作りをした事が始まりとされます。その当時は、定期的に伏見から高瀬川を舟で上り、市内の神社仏閣に花を納めていました。

そうなんですね。今はどんな仕事をなさっているんですか?

生け込みサービス、ブライダルサービスをしています。もちろん、一般的な店舗販売や生花の配達・発送もしています。

生け込みサービスとはどういうものなんですか?

ホテルや旅館等の宿泊施設・会社(受付や応接間等)・レストランや料亭・個人様宅へとお伺いし、大切なお客様をお迎えする空間を四季折々の生花で演出させて頂くお仕事です。

なるほど。さすが京都で150年以上続く花屋さんだけに厳かな仕事ですね。ちなみに、その「場」との調和を図る花はどのように厳選していらっしゃるのですか?

花は「好き嫌い」で決めています。特に変化がある花が好きです。季節によって変化する花は面白くて、そんな花を扱う時は非常にわくわくします。

わくわくですか、素敵ですね。では、花政さんの強みを教えてください。

流行の花を自分のものにする(自分の感性で花を活かす)ことが私たち花政の強みです。何事においても、考えるだけではなく「肌で感じる」ということを大切にしています。経験や知識がないことを頭で考えるより、実体験を通して自分のものにする。そうすることで自分らしいオリジナリティが生まれ、強みになるのです。

具体的に教えてください。

私が花政を受け継いだ当初、花に関して、そして花政に関して、まだまだ無知でした。なので、私は東京に行って勉強することにしたんです。まずは流行の店や好みの店、有名な先生の元に実際に訪れました。そこで多くのことを学び、真似ました。その経験がルーツとなって、今でも実際に足を運び、自分の目で見て、肌で感じて良いと思ったものを自分のものにしています。逆に、そうしないと、自分のものにできないと思っています。

最初は「真似る」ということから入り、それを続けて自分のものにするということですね。その精神が素晴らしいです。例えば、実際に現地に訪れてどのようなことを学んだのですか?

最初に学んだのは「生業」です。つまり、生きていくための糧であり、お金を稼ぐための手段を学びました。まず、松下幸之助さん(パナソニックの創設者)や船井幸雄さん(日本の経営コンサルタント・船井総合研究所の創業者)などの本を読みました。その後、講演会などに足を運び、著名な先生から生業を学びました。そうすると、何事においても「人が大切だ」と思うようになったんです

どういうことですか?

生活においても、仕事においても、付き合うのは「人」です。そして、自分という人間を磨くために、苦労を経験することも大切だと思っています。瀬戸内寂聴さん(小説家・天台宗の尼僧)のところに生け込みに行った際に本を頂いたのですが、その本の中にも「人間は練れなきゃ駄目よ」という言葉があったように思います。

「練れなきゃ駄目よ」……ですか?

つまり、「人は苦労しないといけない」ということです。私は常々そう思っています。特に若い時なんて「当たって砕けろ」ってぐらい、いろんな経験や失敗をしたら良い。周りの人が助けてくれるし、そうやって成長もできる。

(写真:取材風景)

なるほど。藤田社長は仕事、そして花政において「人」を大切にしていらっしゃるんですね。実際にはどう考えていらっしゃるのですか?

例えば、お金を大切にしたらお金が集まりやすくなるものです。物を大切にしたら長持ちします。「人」を大切にすると、良い「人」が集まる。そう考えているので、社員はもちろん大切な存在です。でも、社員にはできるだけ指示は出さないようにしています。

どうしてですか?

社員には「練れる人」になって欲しいからです。その為には、自分で考えて動くことが必要です。

一見大変そうですが、自発的に動くことで成長できるので、社員さんたちにとっても良いことですね。

はい。自分で主体的に動いた結果は必ず自分に返ってきます。そうすることで、物事を学ぶことができるのです。

なるほど。では、藤田社長の「求める人物」について教えてください。

私はどういう人物が欲しいのか、まだ分かりません。

どういうことですか?

理想はたくさんありますが、現実とは違う。なので、「求める人物」を言語化することはできません。

藤田社長らしいです。

ひとつ言えることは、人はみんな「ちょぼちょぼ」だと思います。だから、あまり「求める人物」にこだわらなくてもいいのかな、とも思ったり(笑)。

ちょぼちょぼ???

関西弁で大きな差はなく「みんないっしょ」という意味です。中には天才もいますが……。

どのような人が花政さんに集まるんですか?

花が好きな人が集まりますね。私が何も言わなくても社員はみんな真面目に働いてくれます。そして、辞めないで長く働いてくれる方が多いです。多分、居心地が良いのだろうと思います。

(写真:花政看板)

藤田社長のお陰で、社員さんたちにとって花政が居心地の良い場所になっているのではないでしょうか。では、最後に大学生にアドバイスをお願いします。

何事にも一所懸命すれば良いと思います。

どうしてですか?

そうすると、自分の好きなこと、したいことが分かるようになってくるからです。自分の好きなこと、したいことが出来ることが一番幸せですから。あと、学ぶ際には一流の人に会うと良いです。

なぜ一流の人に会うと良いのですか?

私も学ぶ際は、一流の先生に会ったり、一流の店へ行きました。社員研修も一流の先生のところへ行かせています。そして、「一流を目指せ」と言っています。一流から学ぶべきことが多いから勉強になるんです。

なるほど。でも、大学生はそう簡単に一流に触れる機会がありません。

そうかもしれません。でも例えば、フレンチ料理を食べたいとします。いろんなフレンチのお店がありますが、何事も一流の方が得るもの、感じることが多いので、一流のフレンチ料理店に行けば良いのです。行くためにはお金を貯める必要がありますが、その方が自分の経験値を上げるために良いと思います。

なるほど。では、「花を扱う人」になりたい若者にアドバイスをお願いします。

「気」を大切にしたら良いと思います。

花と「気」は関係があるのですか?

そうですね。一日花でも「頑張って、明日も咲いてね」と愛でたら、しおれずにもつんですよ。やはり、花には気持ちが伝わると思います。気持ちを込めながら愛でる……、これが花を扱う上で大切です。

なるほど。私も色々なものに愛情を注いでいきます!藤田社長、本日はありがとうございました。