株式会社京都絞美京 松岡社長の「求める人物像」

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伝統文化の町、京都にて1937年に創業。1959年、「松岡絞り」の暖簾を掲げる。日本文化「きもの」を染織伝統技で創作し、京鹿の子絞製品および京呉服の製造販売を行っております。京鹿の子絞の技術をさまざまな商品に応用し市場を広げ、和装業界の活性化を目指しています。2016年、伝統と革新による京鹿の子絞の新しいファッションブランド KIZOMÉを発表いたしました。

                 (HPから抜粋)

松岡社長、本日はよろしくお願いします。早速ですが、京都絞美京(以降、美京)さんは何をされている会社ですか?

京鹿の子絞製品、京呉服の製造販売をしている会社です。ここ数年では、その絞り染め技法を活かしたファッションアイテム・建材・インテリア商材なども製作、販売しています。

(画像:HPから抜粋)

京鹿の子絞、京都の伝統産業のひとつですね。具体的にどういった特徴がありますか?

布を糸で括って染め上げる染色技法からできあがる、唯一無二のデザインが特徴的です。その模様が子鹿の斑点を連想させるため、「鹿の子絞」と呼ばれるようになりました。

なるほど。その技術は代々受け継がれてきたと思います。会社自体はいつ創業されたのですか?

創業は1937年です。

1937年ですか、歴史のある企業ですね。そんな伝統産業に携わる企業として、何か大切にされていることはありますか?

今、日本の伝統的な和装産業は衰退の一途をたどっている現状にあります。そんな厳しい産業を回復するべく、日本だけでなく、世界に向けて発信していくことが大事だと考えています。

そのための「KIZOMÉ」ですか?

そうですね。「KIZOMÉ」は着物や帯に用いられる伝統的な絞り染め技法を駆使して、職人が京都で手染めしたファッションアイテムを世界に発信するために誕生したブランドです。

(HPから抜粋)

日本、京都の絞り染め技術を世界に知ってもらうため、これまでにどんな活動をされてきましたか?

パリの「メゾン・エ・オブジェ」やドイツの「アンビエンテ」、ニューヨークでの「NY NOW」、 「イタリア ミラノHOMI 2017」への出展や、ルーブル美術館のミュージアムショップでの取り扱い、また、有名なイタリアブランド〈アリアンナ〉とのコラボレーションなどに取り組んできました。

それまでにも色々な苦労があったと思います。日本の伝統産業を世界に発信、広める際に難しいと感じたことはありますか?

もちろんあります(笑)。当たり前ですが、文化が違うので、外国に日本独自の文化を伝えることが難しいです。アメリカ、ニューヨークは、柄のテイスト、雰囲気で評価されますが、ヨーロッパは、歴史や文化、伝統的背景を知りたがる。その価値観にどのようにして合わせるかが課題だと感じています。

なるほど。伝統的な京鹿の子絞の技術を未来につなげていくための「KIZOMÉ」。松岡社長は3Dプリンターを使用した斬新なアプローチもされていると思います。それについてもお聞きしたいです。

デジタル3D技術を用いて製作した道具を使用して、京鹿の子絞の染め分け技法の一つである「板締め絞り」をおこなう「デジタル3D 絞®」は私の開発した技法のひとつで、これもまた「伝統の継承」のための挑戦です。京都府亀岡辺りから木材が運ばれる要所だったこの地域では、板締め絞り染めの型は木材店が制作していましたが、時代の流れによってそうした店も激減しました。「デジタル3D 絞®」は伝統的工芸品産業がかかえる後継者不足の解決策のひとつです。

従来の染めの技法に先端の技術を融合した、まさに新しい「京鹿の子絞」ですね。「デジタル3D 絞®」を使うと、どんな特徴が出てくるのですか?

特徴は、平面的な板染めにくらべて、立体的な型を作れるこの「デジタル3D 絞®」は、凸凹感やぼかし感が特徴。より奥行きのある色調を楽しんでいただけます。

(画像:HPから抜粋)

京都絞美京の強み

美京さんの強みはやはり、ものづくり産業活性化のための革新的な取り組みですか?

そうですね。そして、京鹿の子絞製品や京呉服をワンストップで提供できることも強みです。

特に昔は伝統産業などの職人の世界は分業制だったと思いますが、美京さんはいつからワンストップ、完成までのすべての所作を自社で取り組み始めたのですか?

先代の父からです。もともと私たちは絞り染めという加工だけを担当していましたが、先代は加工までの複数の工程をすべて実施することに挑戦しました。

それもまた革新的、挑戦的な取り組みで、松岡社長はそのスピリッツを受け継いでいると言えますね。

松岡社長の「求める人物像」

松岡社長の「求める人物像」を教えてください。

私の「求める人物像」は挑戦、創造、継続できる学生です。

それはやはり松岡社長自身が挑戦、創造、継続されてきて、今後もその3つのキーワードを軸にしていきたいと思っているからですか?

はい。歴史から振り返っても、私たちが関わっている伝統産業では時代の流れに沿った進化が求められています。伝統工芸に必要な進化を遂げるためにも挑戦、創造、継続という3つが大切だと感じています。

(画像:取材風景)

学生へのアドバイス

最後に、学生へのアドバイスをいただきたいです。

恵美さんの歳に近い私の息子たちと接していても感じる部分があるのですが、最近は具体的な夢を持ちにくい学生の方が多いのかなと思います。将来ある若い学生の方には、大学生活を通じて、夢や社会人になってやりたいことをぜひ見つけてもらいたいですね。

確かに、何か具体的に「将来これになりたい!」という夢を持つ学生は少ないような気がします。夢を大学生活で見つけるためにはどうしたら良いですか?

何にでも興味を持ってみることが大切だと思います。興味を持ったことをとことん追求する大学生活にしてください。

松岡社長はどんなことに興味をもたれて学生生活を過ごされていましたか?

私の場合は、職人の家に長男として生まれたので、経済や伝統工芸品に興味を持つしか選択肢がありませんでした。なのでより一層、大学生には色々な方面に興味を持ってチャレンジしてほしいと思っています。

どうして経済や伝統工芸品に興味を持つしか選択肢がなかったのでしょうか?

家業は継ぐものだ。という想いが時代的に私の中にあったんだと思います。

なるほど。松岡社長は立命館の先輩で、経営学部に通われたと思いますが、それも「継ぐ」という意識がきっかけですか?

そうですね。私の父が高度経済成長とともに、会社組織を本格化したので、立命館で経営学を学び、会社に貢献したいと思っていました。実際には、大学時代はバブル真っ只中だったので、遊んでばっかりだったかもしれません(笑)。

それも興味ですよね(笑)。松岡社長、本日はありがとうございました。

取材にご協力いただきありがとうございました。