山宗実業株式会社 山田 宗一 社長

2021年2月14日#小売,#染料

山田社長、本日はよろしくお願いします。早速ですが、山宗実業さんは何をされている会社ですか?

私たちは主に糸に色をつける『染料・染色薬品の販売』と『染替え』を行っている会社です。

染料・染色薬品はどこに販売されるのですか?

京都で45年間このお仕事をしていますので、昔は着物や帯を作る会社や工場に販売することが多かったです。今は、昔と比べて着物を着る機会が大きく減り、私たち染色業界全体が落ち込んできたので、15年前から一般のお客様にも染料・染色薬品を販売するようになりました。

そうなんですね。45年間でお客様の層は少し変わったと思いますが、山田社長がお仕事をされるうえで、今も昔も大切にされていることはありますか?

45年前から私たちはただ販売するだけでなく、再現したい色の実現に向けて、お客様と寄り添ってきました。そこはサービスを提供する上で、変わっていません。

それは大切なことですね。ところで、染替えとはどういったサービスなんですか?

GパンやTシャツ、セーターなど、普段使う衣類を染め替えるサービスです。大切な思い出のある衣類が汚れてしまったり、色が落ちてしまったりして、手放すことを考えた経験があると思いますが、そんな時に喜んで頂けるサービスです。

なるほど。

他には、繊維加工もしています。紫外線防止加工や防水の効果があるテフロン加工、抗菌・消臭・防汚の効果があるTioTio加工など、様々な加工を施すことが可能です。そして、子会社のキヌテック(株)では、繊細な絹の着物や帯、ネクタイなどを加工しています(撥水加工やシルクの黄変や汚れから繊維を守る)。

高価な絹製品は出来るだけ長く使いたい物なので、加工できるのはありがたいですね。山田社長の一番自信のある商品は何ですか?

どれも自信のある商品ばかりですが、その中でも深色加工材「ファンダー100」は特に自慢の商品です。

どんな商品なんですか?

「ファンダー100」を使うと黒やネイビーなどの濃い色をより深い色にすることができます。特に黒は「美しい黒」へとグレードアップすることができます。黒を基調とする喪服のような衣類で活躍するアイテムです。

(写真:手前が普通の黒、奥が「ファンダー100」を使用した黒)

「美しい黒」ですか。さぞかし試行錯誤を重ねたと思います。ちなみに、HPに記載してあった「京の色3000色」はどういったものなのですか?

「京の色3000色」は3000色の染料に京都の行事や名所、風景などの名前をつけたものです。

3000色もですか!?凄く凝ってますね。最近では、マスク事業もなさっているんですよね?

はい。シルク不織布を挟み込んだシルクマスクとシルク不織布を使ったインナーマスクを販売しております。

どういった特徴があるのですか?

100%シルクを使っていますので、上質な肌触りはもちろんのこと、冬は暖かく夏は涼しい、上品なマスクになっています。そして、シルク不織布を使用しているので、らせん状に絡まった長繊維撚糸構造で不純物をキャッチすることが期待されます。

(写真:絹宗マスクとインナーマスク/パンフレットから抜粋)

それは贅沢なマスクですね! そんな山宗実業さんの強みを教えてください

染色技術は言わばローテクなので、いかにお客様のご要望にお応えすることができるかが勝負になってきます。どんなご要望でも応えることのできる技術や経験、真摯さは私たちの強みです。特に、繊細な絹製品の染色・加工技術は誇ることができます。

どうして絹製品の染色・加工技術は誇ることができるのですか?

戦後、ナイロンやポリエステル、アクリルのような合成繊維が登場してからは絹製品の染色技術者はほとんど居なくなりました。その中、今でもベテラン職人が現役でいる山宗実業の技術は貴重なものだと言えるからです。そして、プラス思考であることも強みであるように感じます。

プラス思考とは一体どういうことですか?

ここまでの45年間で様々な出来事がありましたが、すべてプラス思考、ポジティブに考えてきました。そうすることで沢山の苦難を乗り越え、今もなお京都という歴史的な土地で事業を継続することができています。

ネガティブよりかはポジティブの方が絶対良いですよね。ところで、山田社長はおいくつですか?

82歳です。

82歳!!とてもお若く見えます!いつから染色の世界にいらっしゃるのですか?

15歳の時からです。岐阜から京都に働きに出たのがきっかけです。

それはもう大ベテランですね(笑)。そんな山田社長の「求める人物」を教えてください。

私たちと同じようにプラス思考の方が良いです。出来るだけ物事をいい方向に捉えることができるのも才能であり、その才能を持つ人は成長も早いです。

物事をプラスに捉えることは成長に繋がるんですね。

しかし、ただプラス思考だけでは駄目です。様々なことにアンテナを立ててキャッチすることも大切です。たくさん吸収しようとする“熱心さ”を兼ね備えた人物が欲しいです。

常に学ぼうとしようとする“熱心さ”も大切ということですね。では最後に、大学生にアドバイスをお願いします。

自分の体を大切にしてください。

どうしてですか?

私は小さい時から体が弱くて、お酒やタバコなどに手を出すことは出来ず、常に健康的な毎日を心がけていました。それが幸い、今も元気に現役で働くことができています。なので、これからの未来を背負う若い人たちには体を大切にして欲しいです。そして、せっかく大学に入学しているのだから、勉強にも励んでください。

どうしてそう思われるのですか?

私の小さい頃は、大学に入って勉強するという選択肢はありませんでした。昔に戻れるのなら、大学に進学し勉強したいです。それは、色々な人と会話をする時に思います。知識がないと会話すらできません。「もっと勉強しとけば……」と思う出来事が何度かあったので、大学生は勉強できる環境を大切にして欲しいです。

勉強ができる環境は当たり前ではないんですね。

そして、当たり前ですが、“感謝”も忘れないでください。

“感謝”ですか?

私の好きな言葉に「感謝が感謝を呼ぶ」という言葉があります。世の中に、感謝することは沢山あります。この世に生まれたこと自体感謝です。私は日々、感謝することで「運」も味方につけていると思っています。恵美くんも大学生も感謝することを忘れないでください。

はい!こうして教えて頂けることに感謝です。山田社長、本日はありがとうございました。

山田社長、本日は取材にご協力頂き、有難うございました。