株式会社AFURIKA DOGS 中須 俊治 社長

#文化,#染料

中須社長、本日はよろしくお願いします。早速ですが、AFURIKA DOGSさんは何をされている会社ですか?

私たちは主にアフリカと京都を掛け合わせた服の製造・販売をしています。また、体験型サービスとして、染め工房の体験会やアフリカのトーゴ共和国を旅して一着の服を作る企画を開催しています。

どうしてアフリカのトーゴなんですか?

トーゴに特別な想いがあるからです。

詳しく聞きたいです。中須社長とトーゴの出会いのきっかけを教えてください。

就職活動のときに思うところがあり、1年間の休学を選択しました。休学中にできることは何か考えたときに海外へ行こうと決めたんです。どうせ行くなら日本人が少ないところが良いなと思ったので、思い切ってアフリカに行くことを決めました。どうしてトーゴだったかと言うと、そのとき偶然にもトーゴでラジオDJの募集をしているのを見つけて、面白そうと思って決めました(笑)。

挑戦的な選択をされたんですね。

はい。公用語のフランス語も話せない、英語も苦手という中で、思い切った決断をしました。

怖くなかったんですか?

はい。公用語のフランス語も話せない、英語も苦手という中で、思い切った決断をしました。

怖くなかったんですか?

怖かったです。しかし、悪い人ばかりではない、必ず良い人はいると考えていたので、「怖い」よりも「面白そう」の方が強かったです。

なるほど。ラジオDJの仕事はうまくいきましたか?

はい。番組を4つ制作することができました。

それはどうしてだと思いますか?

地域の方と仲良くなって、良好な関係性を構築したことが大きいと思います。先ほども言いましたが、私はフランス語も英語も話せなかったので、地域の方が話す現地語を覚えて、話すよう努めました。現地の方にとって公用語のフランス語は私たちで言う英語みたいなもので、ホームな言語ではありませんでした。なので、現地語が話せるようになった私は、割とみんなと仲良くなるのも早かったのです。

(写真:取材風景)

フランス語や英語が苦手だったのが、結果的に良かったかもしれませんね。トーゴでの印象的な思い出はありますか?

あります。滞在していたパリメという町では週に一回「グランマルシェ」という定期市が開催されていました。そこに仲の良いメンバーで行ったときに、メンバーのひとりが集団リンチを受けるという事件が起きました。そのとき私は怖くて動けず、大事な友達が目の前で暴行を受けているのに、何もできないことが情けなかったんです。一方、その事件で一緒だった友人は「友達が傷つく世の中に生きたくない」と訴えました。その言葉を聞いた私は、就活を目の前に生きている自分とはまったく別の物差しがあることを知りました。日本にはないトーゴの生き方を知り、尊さを覚えました。

なるほど。その尊さが中須社長とトーゴの関係を繋ぎ止めているんですね。では、そんなトーゴと京都を掛け合わせることにどんな意味があると考えていますか?

意味があるかどうかは分かりませんが、京都の染め職人の生き方はトーゴの人々の生き方に似ていました。1年間の休学を終えた後、大学を卒業してからは、京都信用金庫(以降、京信)に勤めました。そこでの営業で嵐山地域の染め職人を担当して関わっていくなかで、失敗から学ぶ職人の世界とトーゴが似ているなと実感しました。単純に社会的に正解とされる道を歩むのではなく、時間をより豊かにしようと尽力するトーゴと京都の染め職人を掛け合えせたら面白いことができそうだな、と思いました。

ところで、どうして大学を卒業して銀行マンになられたんですか?

近江商人で有名な滋賀大学で経済を学んでいました。在学中にバングラデシュのグラミン銀行創設者のムハマド・ユヌスがマイクロファイナンス(貧しく、お金の力が必要な、信用力の低い人々に小口の融資や貯蓄などの金融サービスを提供すること)を生み出し、ノーベル平和賞を受賞したのを知り、金融の力は凄いなと感銘を受けて志したのがきっかけです。京信に入社したのは、トーゴに滞在しているときに現地の方とたくさんコミュニケーションをとりながらラジオ番組を制作した経験を、出身地の京都でも活かせると思ったからです。

何年間、京信に勤めていたんですか?

4年間です。

どうして4年間だったんですか?

ゆくゆくはアフリカで金融に携わる仕事をしたいと思っていましたので、最初は、色々なことを考慮した結果、6年くらい勤めるつもりでした。しかし、職人さんとの出会いで方向性が少し変わって、前倒しで4年間になりました。そして、退職した2018年に(株)AFURIKA DOGSを創設しました。

「AFURIKA DOGS」の名前とロゴの由来は何ですか?

「DOGS」はアフリカ・トーゴ地域の一部でつかわれる「仲間」を意味するスラングです。決してきれいな言葉ではないですが、そんな泥くさくて、人間くさい関係で溢れたらいいな、という願いを込めました。ロゴは「DOGS」犬を影絵で表現したときの手の形です。

(写真:/HPから抜粋)

なるほど。では、そんなAFURIKA DOGSさんの強みを教えてください。

まず、トーゴの伝統布、京都の染め職人の技術には自信があります。多くの商品が一流の文化や技術で生み出されたものです。そして、アフリカと京都を掛け合わせていることは強みと言えるかどうか分かりませんが、面白いと思います。

面白い掛け合わせをされているのはAFURIKA DOGSさんの強みだと思います。実際にトーゴと一緒にお仕事をされている会社は日本にAFURIKA DOGSさんだけなんでしょうか?

はい。トーゴと関わりがある会社は私たちだけなので、大使館とも良好な関係にあります(笑)。

とてもニッチな市場ですね(笑)。実際、私もトーゴ共和国の存在はAFURIKA DOGSさんで知りました。もっと知れ渡って欲しいです。では、そんな中須社長の「求める人物像」を教えてください。

一緒に働くならポジティブな人が良いです。

中須社長のポジティブとは何ですか?

楽しもうとする精神です。今後、社会はどうなるかわかりません。そんな時代に社会人になる大学生は不安が少しあると思います。しかし、そんな時代だからこそ、ビクビクするのではなく、変化を楽しむマインドを持って欲しいです。

それは大学生へのアドバイスにもなりますね。

そうですね。その期間を切り取ったときに「なにもできない期間」として切り取るのか、「良い準備期間」として切り取るのか、それは自分次第です。どんな時も、いい意味で“都合よく”、考えてください。

中須社長は今をどのように考えていますか?

今が一番幸せです。京信を辞めたとき、コロナ禍で新事業を始めたとき、色々な人に反対されましたが、今が一番幸せです。「あの頃は大変だったね」と語れる、その当事者になれただけで人生の価値です。

物は考えようですね。中須社長、本日は有難うございました。

本日は取材にご協力頂き有難うございました。