京都信用金庫 榊田 隆之 理事長

2021年1月7日#金融

京都信用金庫とは

榊田理事長、本日は宜しくお願いします。早速ですが、京都信用金庫(以降、京信)さんは何をされている金融機関ですか?

京信は昭和26年に信用金庫法で戦後、中小企業の復興・支援のために出来上がった金融機関です。私たちは預金を預かる点では銀行と全く一緒です。しかし、融資をする先が会員さんであるという点で銀行とは異なります。

信用金庫と銀行にはそんな違いがあるんですね!ちなみに、どのような方が会員になれるのですか?

会員になれる方は「営業地域に居住」「営業地域に勤務」「営業地域で事業を行う(従業員数300人以下または資本金9億円以下)」の3つのいずれかに該当する方に限られています。そして、私たちの営業地域は京都、滋賀、北大阪になります。

なるほど。地域に根ざした金融機関と言えますね。

はい。私たちは地域の皆様、そして地域社会の発展に寄与することを基本理念としています。株主のための会社ではないので、地域全体で経営し、利益の配当を地域に還元する組織です。

地域の発展のための協同組織金融機関であるならば、京信が果たすべき役割というのも確固としたものですよね。

そうですね。21世紀に入って、日本は数多くの課題を抱えています。そして、日本は成熟社会を迎えています。その中で、「地域特性・中小企業特性を持つ協同組織金融機関は銀行さんよりも、地域の事を長期の目線で真剣に考えることができる」ということに対しての期待感はかなり高くなっているように感じます。

“京都”の金融機関であること

信用金庫は全国に254金庫あります。“京都”信用金庫さんだからこその特徴はありますか?

京都は他の地域と比べて圧倒的に中小企業が多い地域です。その数に比例して、私たちの責務はより一層重要だと感じています。そして、京都には長い歴史があるので、「地域を裏切らない」という信頼の部分では、さらなる重みを感じています。

京都信用金庫の強み

では、そんな京信さんの強みを教えてください。

課題解決に力を入れていることが私たちの強みです。

どういうことですか?

今や、「人生100年時代」とよく言われます。そんな時代、企業にも個人のお客さまにも多くの課題があります。事業の課題だけではなく、暮らしの課題、地域にある様々な課題の相談相手になることに努めています。

京都河原町に2020年11月に出来た「QUESTION」の運営もその活動の一環ですか?

はい。人々の頭の中にある「?(QUESTION)」をみんなが持ち寄って答えを探しに行くためのプラットホームを作りました。まさに課題解決のための場所です。これからの金融機関に求められるものは様々な課題解決に尽力することだと思います。単なる金融支援だけではなく、地域にある課題や事業の課題などを解決し、共に豊かな未来を創造することが私たち「コミュニティ・バンク」の使命です。

京信さんの真の「コミュニティ・バンク」を目指す姿、とてもかっこいいです。

私たちは6年前に日本の金融機関で初めて営業目標(ノルマ)を廃止しました。ノルマは真の「コミュニティ・バンク」を目指す私たちにとって邪魔でしかないと判断しました。一番大切なのはお客様の満足であり、私たちのノルマではありません。このように根本から真の「コミュニティ・バンク」という姿を本質的に見つめ直すために対話型経営をしています。

対話型経営???

約2000人の社員みんなで京信の良くない所を発言して、改善していくということを徹底的にしています。地域の課題を解決するためには、まず京信の課題を解決しなければいけない。そして、京信の課題の中に、地域の課題解決のヒントが含まれているかもしれません。経営者として私が社員の不満を取り除くことで、その社員がお客様に心から寄り添う姿勢を大切にすることができる、と思っています。

HPで京信さんは「日本一コミュニケーションがゆたかな会社」を目指していると仰っていました。そのために「2000人のダイアログ」という社員さんの交流・対話・意見交換の場を設けているんですよね?

はい。私たちは真剣に「日本一コミュニケーションがゆたかな会社」を目指しています。その為に設ける「2000人のダイアログ」で生まれる意見は貴重な現場の声です。例えば、その場で「名刺に顔写真を載せるべきだ」という意見が出ました。その意見を尊重して、私たちの名刺には顔写真が載っています。また、廃止していた営業目標も自主的に設定したいといった意見も出ました。与えられたノルマではなく自ら設定した目標なら好ましいと考えました。様々な意見に真剣に対応することで真の「コミュニティ・バンク」にふさわしい風土が築かれます。良い会社・組織は理念・風土・人のトライアングルが揃っています。理念も大切ですが、それと同時に社内の良い風土、質の良い人を育てることを大切にしています。

人と人との距離を保たなければいけない今はどのようにコミュニケーションを推進しているんですか?

Zoomや社内SNSを活用しています。社内SNSでは、そこで起きた課題や悩み、良かったことなどを自由に投稿しシェアリングしています。こういった時代でも、工夫してコミュニケーションをとり、人と繋がろうとする社内の姿勢は自慢できる風土です。この風土を築き上げるのに10年以上もの長い時間がかかりました。

人と人を繋げようとする徹底さが伝わります。そして、築き上がった風土は本当に魅力的です。では、そんな京信さんの「求める人物像」を教えてください。

京都信用金庫の「求める人物像」

“誠実”な人です。嘘をつかない、自分を自分以上に大きく見せない、失敗を恐れない、気配りができる。人の基本的な要素を大切にします。

どうしてですか?

組織の風土や理念がしっかりとしていたら人は成長できます。なので、人の根本的な部分を見るようにしています。

なるほど。ちなみにどうやって人の基本的な要素や性格を見ていくのですか?

なかなか見えませんよ(笑)。なので、私たちは60人6ヶ月の就労型インターンシップなども実施しています。半年間もあると、割と見えてきます。

大学生にアドバイス

60人6ヶ月の就労型インターンシップですか。双方にメリットがありますね。では、最後に大学生にアドバイスをお願いします

いっぱい失敗したら良いと思います。

失敗ですか?

はい。今の大学生は大人しいように感じます。チャレンジや失敗を恐れた無難な行動は、社会では役に立ちません。自分自身の意見を発信して初めて社会と関わることができます。「失敗は成功のもと」とよく言われます。本当にそうです。何事も失敗を恐れずに行動して、自分自身を発信することが大切です。そして、その行動は「責任を負う」という経験も同時にすることができます。

私も失敗を恐れずに何事も挑戦していきます!今日は京信さんの知らなかった魅力を知ることができました。榊田理事長、本日はありがとうございました。