株式会社トランスポートラン 建野 泰正 社長

#物流,#小売

建野社長、本日はよろしくお願いします。早速ですが、トランスポートランさんは何をされている会社さんですか?

小売業や卸業で扱う商品の流通加工(製品として店頭に出す前の準備作業,仕上げ作業)や在庫管理、輸送などを行う会社です。最初は運送会社から始まりましたが、今では総合物流会社という立場で仕事をさせて頂いています。

創業された1996年からの25年間で総合物流会社に成長されたんですね。ちなみに、総合物流会社になると、どのような仕事が増えるんですか?

流通の合理化の観点から、本来、小売業や卸売業などの業務であった組み立てや加工などの業務も委託して頂けるようになります。また、飲料・食用油脂・加工食品の卸業のような関連サービスの展開も可能になりますね。

(写真:仕分け風景/HPから抜粋)

なるほど。本来の運送会社の業務を超えたサービスを提供されているんですね。最初は運送会社として、どのように始められたんですか?

もともと勤めていた運送会社を辞め、10万円ほどの中古軽自動車一台を買って独立しました。

どうして独立しようと思われたのですか?

社会人になって働くにつれて、両親をもっと安心させたいという親孝行の気持ちと、周りの友達から「立派になったな」と認められたいという気持ちが湧いてきたのがきっかけです。その手段として会社を創業しました。

会社創業のきっかけは“焦り”だったんですか?

焦りよりも「認められたい」、という承認欲求が強かったです。学生時代に遊び呆けていた自分が悪いのですが、スーツを着て立派に働いている友達たちに引け目が有り、自分に対して悔しさもありました。だから、彼らのように立派な人物になりたいと思いました。そして、それは親の安心に繋がると思っていました。

どうしてそこで運送業を選択されたんですか?

自分のできることを考えた時に、運送業の経験しかなかったからです。

まずは自分のできることから始められたんですね。もちろん、苦労されたと思います。

そうですね。最初は誰からも相手にしてもらえませんでした。しかし、難しく考えず「出来ることをとにかく一生懸命やる!」ということを徹底してから徐々に仕事の依頼が増えてきたように思います。

仕事の依頼が増えるようになった時期、建野社長の中で何か変化はあったんですか?

創業してからの2年間はとても厳しい毎日が続き、事業を諦めようかと思っていました。そんな時に相談した、起業している親戚から「世の中には立派な経営者がいる。そんな経営者から学べることは沢山あるよ。例えば、京セラの稲盛和夫さん」とアドバイスをもらい、その時初めて、稲盛さん(稲盛和夫 京セラ(株)創業者)の存在を知りました。そして、稲盛さんの哲学に感動し、勉強するようになりました。

どんな勉強から始められたんですか?

まず、『PASSION』(稲盛 和夫 1995年)という本を読みました。読書をする習慣がそもそもなかったので、最初は読むのに苦労しました。そして、「盛和塾(稲盛 和夫から人としての生き方[人生哲学]、経営者としての考え方[経営哲学]を学ぼうと1983年に発足した塾)」に入塾したのをきっかけに、「世界大会(国や地域を越えた盛和塾生同士の結束の場)」にも参加し、稲盛さんから直接アドバイスを頂きました。とても感動したのを覚えています。

どうして『PASSION』から読まれたんですか?

多分、稲盛さんの本の中で文字が一番大きかったからだと思います(笑)。

それも運命的な出会いですね(笑)。具体的にどんなことを学ばれたんですか?

それまでは、まだ若かったこともあり、商売での成功は知識量や相手との駆け引きが大切だと思っていました。しかし、勉強するにつれて、「人として正しい行いをする事」が商売の成功に繋がることに気づきました。損得ではなく、善悪の善である“良心”に従えばいいんだというシンプルな考えにより、私の気持ちも大変、楽になりました。

その時はおいくつだったんですか?

25歳の時です。今は50歳です。

なるほど。建野社長が考える“良心”とは何ですか?

経営でいえば、お客さまに喜んで頂きたい、社会にも貢献したい、そして、会社の従業員も幸せにしたいという、みんなと共に良くなろうとする心の現象が“良心”だと考えています。

その“良心”の選択で会社として難しかったことはありますか?

業務や規模拡大と“良心”の折り合いの難しさは感じています。私は経営者なので、もちろん会社を大きくし、より多くの人に喜ばれたいという気持ちはあるのですが、
その中で、たとえば、地域や業務を拡大すると、サービスの質が上がる部分と落ちる部分が生じるときがあります。そのとき、”良心”に従い、自社だけでなく、三方善となるように追求するところが難しいですね

(写真:(株)トランスポートランロゴマーク/HPから抜粋)

そうですね。地域を絞ることの良さ、活動地域が広いことの良さ、どちらも良い点があるので、とても難しいと思います。そんなトランスポートランさんの強みを教えてください。

まず、事故が少ないことが私たちの強みです。

具体的に教えてください。

運送会社にとって、最も怖いのが人身事故です。もちろん、対策は徹底していますが、絶対はないので、電話が鳴る時はいつもドキドキします。その中で、私たちは事故発生率を最小限に抑え、人身事故対策の保険料が一番安い状態を保ち続けています。それぐらいに、事故は同業他社と比べて圧倒的に少ないです。

事故を最小限に抑えるために大切にされていることは何ですか?

常に社員の皆さんには安全運転レベルを超えた、自分なりの「美しい運転」を心掛ける事や、「事故は絶対に起こさない!」と意識して頂くことを大切にしています。
意識して頂く為には、やはり、何度も何度もそういう話しをして、社員の潜在意識に透徹するようにすることが大切だと考えています。

意識し続けることは簡単ではないので、建野社長自身が叫び続けることは重要ですね。

そうですね。私たちの会社は総合物流業であると同時に、人材価値創造業という定義も持っています。人は無限大の可能性を秘めていますが、かつての私もそうだったように、自信に満ち溢れて入社する人ばかりではないです。自分に誇りを持てなかった過去の私がなんとかここまで歩んで来ることが出来たように、ひとりひとりの価値をどんどん創造し、どんどん高めていくことは、社長としての責務だと思っています。

(写真:取材風景)

建野社長がおっしゃるからこそ、とても重みがあることだと思います。そんな建野社長の「求める人物像」を教えてください。

勉強は出来るけれど、人間性はあまり良くない、という人よりも、勉強はさほど出来なくても、人間性は素晴らしいという人材が欲しいですね。

「人間性が良い人」はどういう人ですか?

“良心”に従える人です。わかりやすく言えば「宿題がある状況でゲームの誘惑に勝ち、宿題を終わらせる」といった、日々の小さな“良心”との葛藤に打ち勝ち、従うことができる人です。他にも「自分さえよければという気持ちを抑え、相手にも思いやりを示せる」といったこともそうですね。要は、「やった方がよいことはやる!やってはいけないことはやらない!」という良心の声に意志を働かせられる人です。

人間として能動的主体性は最も大切なことのひとつですね。最後に、大学生にアドバイスをお願いします。

自分のやりたいことをとことんやった方が良いと思います。そして、壁にぶつかれば、それは大きな成長のチャンスです。自分のやりたいことをやるだけでも、必ず悩みや課題が出てきます。それを見つけることができるのはとても貴重なことです。

大学生は好きなことができる時間があるので、とことん挑戦することが大切ですね。

そして、悩んだ時は“三方善”を考えて動けば良いと思います。自身の物心両面の幸せだけでなく、周りの人や、社会の発展と、みんなが共に良くなるような判断と行動は、気持ち的にとても楽になるだけではなく、きっと結果も良い方向に向かうと思っています。

壁にぶつかった時は“三方善”、“良心”に従うべきですね。建野社長、本日はとても広い学びをすることができました。ありがとうございました!

本日は取材にご協力頂き有難うございました。