株式会社union.a 円城 新子 社長
円城社長、本日はよろしくお願いします。早速ですが、union.aさんは何をされている会社ですか?
私たちは出版社で、主にフリーマガジンを自社媒体で発刊しています。
例えばどんなフリーマガジンがあるんですか?
隔月発行の「ハンケイ500m」や季刊の「おっちゃんとおばちゃん」などがあります。「ハンケイ500m」は2011年の創業とともに発行が始まったフリーマガジンです。そしてその3年後に、季刊の「おっちゃんとおばちゃん」が誕生しました。
「ハンケイ500m」はどんな内容のフリーマガジンなんですか?
自分たちの足で見つけた、オリジナルな情報を発信しています。京都のあるバス停から半径500mの円内をくまなく歩き、独自の哲学・ポリシーを持った「職人」と呼べる人々を発見し、取材しています。特集を含めた全ページが、編集部が興味を持ち、衝撃や感動を受けたことだけで構成されています。
「人」にフォーカスされたフリーマガジンなんですね。
はい。様々な価値観を持った方たちと出会い、取材にご協力頂くのですが、私たちが「こんな考え方、こだわりがあるのか!」と感じた気持ちを地元の人にも知ってほしいです。
円城社長はどうして「ハンケイ500m」を刊行しようと思ったのですか?
大学卒業後、私は出版社で働いていました。しかし、雑誌が売れない時代、「ネットに同じ情報があるから売れない」という編集者の大義名分を目の当たりにし、ならば、「ネットにない自分の足で稼いだ情報だけを発信したい」と強く想うようになったからです。
独立することに不安はなかったのですか?
不安はあまりありませんでした。というのも、フリーマガジンには大きな博打がないからです。フリーマガジンは広告収入が100%なので、制作費用を計算し、その金額を自前に集めることができれば、赤字を避けることができます。
そうなんですね。ちなみに、いつも何部ほど印刷・配布されているんですか?
おかげさまで2万部からスタートした部数は10年のうちに3万1000部に増え、いつも全部はけます。
それは凄いです!
地下鉄の駅ですぐに在庫切れになってしまうので、お金を払ってでも欲しいと言われるぐらいです。
そこまで人気なのはどうしてだと思いますか?
まず、0円であることは人気の理由のひとつです。
無料は本当に惹かれます(笑)。
そして、他にない雑誌であることも人気の理由のひとつです。
HPで拝見しましたが、「ハンケイ500m」のラジオ化もされていますよね?
そうですね。3年前からKBS京都ラジオで「サウンド版ハンケイ500m」を毎週土曜日の17時から放送しています。私がパーソナリティーとして出演しています。
そこではどんなことを話されるんですか?
「ハンケイ500m」本誌で載せきれなかったこぼれ話をしています。
情報を自分たちの足で集めているからこそできるラジオ番組ですね。ところで、「おっちゃんとおばちゃん」はどういった内容なんですか?
18歳から30歳くらいまでの年齢層の方に向けの本です。おっちゃん・おばちゃんと呼ばれる年齢になったときに、仕事が毎日面白くてたまらないと思っている方に取材し、その秘訣を聞いています。
それを始めようと思ったきっかけは何だったのですか?
「ハンケイ500m」のリサーチの時、80歳くらいの、おせんべい屋のおじちゃんと出会ったのがきっかけです。そのおせんべい屋はお世辞にも綺麗な店、繁盛している店とは言えないお店でした。そこでひとりで切り盛りするおじちゃんに興味が沸き、あれこれ聞いたその帰り、おじちゃんは私を追いかけてきたのです。そして「新作ができたから味見してほしい」とおせんべいの試作を渡され、私はとても驚きました。昨年オープンした店ではなく、おせんべい屋を始めて何十年も経つおじちゃんが今もなお、嬉しそうに新商品を出す姿に感動したんです。そのおじちゃんは80歳の今でも、仕事を楽しみ、人生のピークに立っています。そのような人生があることをこれから就職する若い人に教えたい、伝えたいと思い「おっちゃんとおばちゃん」が生まれました。
とても良い話です。円城社長は人と出会うことが好きで、出版社に入社し、今、union.aを経営されているんですか?
人との出会いは好きです。色々な価値観を持っている方との出会いはいつも楽しいです。そして、その発見を伝えたい、話したい、と強く思います。よく見るとすごく興味深いことなのに、みんなが見過ごしてしまったことを発見し、それをみんなに伝え、共感してもらうことが好きです。
幼少期からそのような性格だったんですか?
かもしれません(笑)。
では、そんな円城社長の「求める人物像」を教えてください。
自分がやりたいことの実現に貪欲な人と一緒に働きたいです。
どうしてですか?
自分のやりたいことを実現してほしいからです。最近、「社会貢献が大好き」とか「誰かのために」と考える学生が多いように感じます。それはとても素晴らしいことです。でもそれに加えて、自分のやりたいことをしてほしいです。
なるほど。では最後に、大学生にアドバイスをお願いします。
仕事を選ぶ時こそ、自分の個性を出してください。
詳しく教えてください。
大学生はみんな人それぞれ違います。髪型、ファッション、昼ご飯のチョイス……、様々な好みがあり、自分の個性を大切にして生きています。しかし、就活になった途端、「安定していて、親が安心するから」「親が勧めるから」という理由で仕事を決める人も沢山いるでしょう。とても勿体無いです。自分の仕事を選ぶときこそ、自分の個性を出すべきです。何をお昼に食べても親を説得できるように、どんな仕事についても親を説得し、安心させられるようにしてください。
仕事は長い人生と深く関わるものなので、自分のしたいことをするのが理想ですね。
本当にそうです。おせんべい屋のおじちゃんのように、おじちゃん・おばちゃんになっても「今が人生のピーク」と思えるような仕事を選んでほしいです。
そんな生き方は本当にかっこいいです。円城社長、本日はありがとうございました。