株式会社髙津商会 髙津 博行 社長

2021年2月2日#小道具

髙津(たかつ)社長、本日はよろしくお願いします。早速ですが、髙津商会(こうずしょうかい)さんは何をされている会社ですか?

私たちは映画会社やテレビ局などの映像業界に小道具をお貸しする会社です。今はコロナ禍で難しくなっていますが、1970年大阪万博のお祭り広場のお手伝いをさせて頂いたのをきっかけに「金沢百万石まつり」や「松山春まつり」などの地方の時代行列やイベントにも小道具をお貸ししています。

小道具とは何ですか?

小道具とは手で持てるもの全てを指します。逆に、壁や床、天井のような手で持てないものを大道具と言います。

髙津商会さんが持ち合わせている小道具からカバーできない小道具の注文がきた場合はどのように対応するのですか?

何が何でも対応します。絶対に断りません。医療器具のような高価な小道具は病院からお借りしたり、撮影現場を病院そのものにして対応しています。

断らないんですね。ちなみに、人気な小道具はありますか?

私たちの“優秀社員”は平らな椅子や机といったワイドショーなどで使われるものです。ワイドショーは月曜〜金曜日まで通して使われるので必然的に人気になります。

優秀社員!?

人気な小道具のことです(笑)。テレビなどで実際に活躍するのは小道具なので、私は小道具のことを“社員”と呼んでいます。

温かいですね(笑)。HPで拝見しましたが、「武将になろう」というサービスもなさっていますよね?

はい。実際に映画などの撮影で使われている本格的なヨロイ(甲冑)の着付け体験も提供しています。

それはどうして始めたのですか?

かの有名な「映画村」が太秦地区にあるように、この辺り(右京区太秦)は20年前までちょんまげ姿の役者さんが普通に歩いているという光景が広がっていました。松竹さんや東映さん、大映さんのような大手映画制作会社のすべてが軒を連ね、日本のハリウッドと呼ばれるほど活気に溢れていました。しかし、今ではそんな光景はありません。そんなかつての精彩が失われたことを悲しく思い、「武将になろう」を始めました。少しでもあの頃の太秦になってくれることが私たちの望みです。

(写真:「武将になろう」/HPより抜粋)

失礼ですが、太秦が日本のハリウッドと呼ばれた時代があったとは知りませんでした。髙津商会さんはどういった経緯で創業されたんですか?

髙津商会は私の先祖の高津梅次郎翁が「日本映画の父」と呼ばれた牧野省三さん(日本の映画監督 1929年(50歳)没)に勧められて1918年に始めた会社です。当初は一条御前にあった法華堂撮影所の隣にありました。関東大震災で東京での撮影が難しくなり、撮影地として京都が栄えた時期でした。

なるほど。牧野省三さんの勧めで始まったんですね!髙津社長は何代目ですか?

4代目です。

凄いですね! 失礼ですが、髙津社長はおいくつですか?

69歳です。

69歳には見えないです(笑)。時代の流れとともに何か変わった事はありますか?

厳しすぎて女性が入る事は考えられなかった昔の映像業界と比べて、この業界に入る女性の割合が多くなりました。私の会社では女性が40%を占めています。そして、男性と女性の感性の違いを感じています。髙津商会の女性は感性とこだわりが強い人が多いです。この仕事に向いた性質なので女性が増えることは好ましいです。

女性が活躍しているんですね。では、そんな髙津商会さんの強みを教えてください。

豊富な種類の小道具を持っていることが私たちの強みです。

何種類の小道具をお持ちになっているのですか?

数え切れないほどです。私たちは創業100年を超え、その間、テレビや映画などで必要とされた小道具はすべて保管しています。今では、東映さんや松竹さん、各テレビ局の倉庫に加え、敷地3000坪に4階層倉庫5棟を建て蓄積しています。

物凄い数!それは長い歴史の賜物ですね。日本アカデミー賞の協会特別賞を受賞なさっていますよね?

はい。映画製作の現場を支える種々の職能に従事する方々の栄誉を讃える賞を2003年に頂きました。

(写真:2003日本アカデミー賞 協会特別賞/HPより抜粋)

凄いです!では、髙津社長の「求める人物像」を教えてください。

どこの会社でも必要だと思いますが、コミュニケーションができる子が良いです。多くの人と協力してひとつの作品を作るのでコミュニケーションは欠かせません。

チームワークにコミュニケーションは欠かせないですよね。

そして、「後世に良いものを残したい」と思っている人が欲しいです。

どうしてですか?

映像というのは後世に残るものです。その映像に関わる職業なので、第一に「後世に良いものを残したい」と思って欲しいです。そして、そう思うためには“こだわり”が必要です。後世に見られても恥ずかしくない作品を作ろうとする“こだわり”を持っている人が良いです。

髙津社長の言う“こだわり”はどんなものですか?

ものづくりを追求する心です。与えられた台本に合う小道具を自分の頭の中で想像し追求する。そこに喜びを見出す心だと思います。“こだわり”を持っていれば、自分が選んだ全ての小道具を説明することができます。映画監督に「どうしてお前はこの位置にこの小道具を置いたのか」と問われても、その問いに答えることができます。でも、映画はみんなで作るので、皆が皆、自分の“こだわり”を出し過ぎるとまとまりません。やはり、コミュニケーションが重要ですね。

なるほど。他に、小道具を扱うからこその「求める人物像」はありますか?

私たちの仕事では古代〜現代までの小道具を扱うので、それ相応の広い知識が必要です。そして、作品を担当するとなった時には、その作品の設定された時代の情報を掘り下げる必要があります。その掘り下げる力が大切になってきます。限られた予算・時間の中で適切な情報を収集する力です。

(写真:取材風景)

様々な情報が簡単に調べられる時代ですが、しっかり掘り下げようと思ったら努力が必要ですね。では最後に、大学生にアドバイスをお願いします。

大学生には「引き出し」を多く作って欲しいです。

どういうことですか?

例えば、居酒屋に行くにしても同じ店ばかり行くのではなく、色々な店に行って多種多様な居酒屋を知って欲しいです。多くの経験をして、「引き出し」の数を増やすべきです。その「引き出し」が自分の“こだわり”を豊富にさせます。いっぱい遊び、色々な経験をし、自分の選択肢を増やしてください。そして、大学生は自分の個性を出すべきです。

「個性を出す」!?具体的に教えてください。

私はリクルートスーツに疑問を感じています。みんな同じ格好で、没個性極まりなく、面白くありません。実際、高津商会では髪型髪色自由で、その人の個性を大切にしています。その方が面白いし、自分の仕事に色がつきます。なので、大学生も自分の個性を楽しんでください。

私も個性を前面に出しながら、大学生活を楽しんでいきます!髙津社長、本日はありがとうございました。

本日は取材にご協力頂き有難うございました。