株式会社大垣書店 大垣 守弘 社長
大垣社長、本日は宜しくお願いします。早速ですが、大垣書店さんは何をなさっている会社ですか?
私たちは「本」を媒体にして知識や経験、情報などを売っている会社です。
単純に本を売っている会社ではない、ということですね?
はい。私たちは知識や経験などと人が出会う空間を創っています。その点で「本」はとても優れた手段です。何千年もの歴史や文化、偉人の考え方や生き方が「本」を読むだけで知ることができます。
大垣社長はそんな「本」を売る、ということに関して何か想いはありますか?
「本」を売ることで日本の将来、人類の将来のために少しでも人々の意識を変えたいと思っています。みんなが自分のことしか考えないようになれば日本、人類の将来はありません。少子高齢化問題や環境問題など様々な問題を日本、地球は抱えていますが、そんな自分以外の未来に目が向くきっかけを創りたいです。
もはや大垣社長は社会全体の人材教育に責任を持って「本」を扱われていますね。今やネットで本を買える時代ですが、それについてはどのように考えていますか?
「本」を実店舗で売るからこその価値を創出したいです。
詳しく教えてください。
私たちは「知的興奮カンパニー」をスローガンに、知的な興奮を生み出したいと思っています。単に紙媒体を売りたいのではありません。というのは、「本」との出会いは新たな興味や関心、発想を生み出すことができるからです。確かに今は、ネットで簡単に本は買えますが、実店舗で出会うような新しい発見はネット上では見つけることができません。私たちはそんな実店舗だからこその価値を創出していきます。
ネットだと人工知能が購入リストから「あなたのおすすめ」を表示し、知識が偏りがちになりますよね。知的な興奮を生み出す会社、京都の本屋さんとしてとても頼もしい存在です。大垣書店さんは今、店舗数はどのくらい展開されているのですか?
京都に23店舗。大阪・兵庫・滋賀に7店舗。その他にも、北海道・東京・埼玉・静岡・岐阜・広島にも展開しています。
京都だけではなく、他府県にも展開されているんですね。流石です。私は烏丸の京都経済センターにある「本店」によく足を運ぶのですが、とても手の込んだ内装のように感じます。何かこだわったポイントなどありますか?
実は「本店」の徒歩3分圏内の範囲には、すでに「四条店」、「烏丸三条店」があるんです。その中で、京都経済センターの一階に「本店」を展開したのは地元文化及び経済拠点として情報を発信したいからです。ビジネス・経済に関する商品を強化するのはもちろんのこと、地域の方から親しまれる普段使いの商品や国内外の京都に憧れを持つ方が抱く「京都で生活したい」を実現出来るような情報も積極的に発信しています。なので、ふらっと立ち寄った際に新しい発見をしてほしいです。
なるほど。今思えば確かに、書店全体が情報を発信している感じがします。では、そんな大垣書店さんの強みを教えてください。
強みと言えるかどうかわかりませんが、京都密着の「本屋」であることが強みのように感じます。先程言った「本店」も一例ですが、店舗によってその場所の「本屋」として求められる役割は異なります。その地元の方々に認めてもらう「本屋」になるべく、日々努力をしています。そして、その地域の方に新たな発見をもたらし、地域に貢献したいです。
地域密着であることは大きな強みだと思います。ひとつひとつの店舗がその場所に求められる「本屋」になっているんですね。ところで、そんな大垣書店さんはどのようにして始まった会社なんですか?
もともとは家業で営む、本当に小さな本屋でした。場所は北大路にあり、主な仕事は学校の教科書販売でした。そして私が立命館大学を卒業する年に、北大路が地下鉄の終点になり、北大路の街全体が人で溢れるようになったのをきっかけにどんどん売り上げが伸びてきました。そのタイミングで私も手伝うようになり、今に至ります。順風満帆ばかりではなかったですが、お客さんの声を聴きながら真面目に仕事をしていたことがここまで拡大できた要因だと思います。
家業で営む小さな本屋さんから、今では京都を代表する本屋さんに成長されたんですね。本当にコツコツと仕事をされてきたからこその結果だと思います。ちなみに、知識や経験、情報などを売る会社として「本」以外に何か試みていることはありますか?
NPO法人でラジオ放送局もしています。
ラジオですか!?
はい。京都府コミュニティFM放送局のひとつ「Radio Mix Kyoto FM87.0MHz」を運営しています。主に北区と上京区の地域情報と防災に役立つ情報を発信しています。大学と協力して番組も立ち上げており、立命館大学もゼミの一環として番組を持って貰っています。
「Radio Mix Kyoto FM87.0MHz」で何を目指しているのですか?
先程、大垣書店は地域密着の「本屋」で、地域に貢献したいと言いました。ラジオも同じです。京都のまち、企業、大学を繋ぎ、それらをMIXすることで、さらなる京都の魅力を生み出し、地域を活性し、社会の発展に貢献する放送を目指しています。
大垣書店さんは目指すベクトルが定まっていてとてもかっこいいです。
宣伝になってしまいますが、堀川商店街に「堀川新文化ビルヂング」を2021年秋オープン予定です。京都府と一緒に進めている文化と芸術の新たな発信地としての新事業で、こちらでも京都の魅力を発信したいと思っています。
本屋のようにふらっと立ち寄って京都の魅了を発見できる、京都府が大垣書店さんに託す理由がよく分かります。では、そんな大垣社長の「求める人物像」を教えてください。
人の気持ちの分かる人が良いです。
それはどうしてですか?
人は皆、自分一人で生きていけません。その中で人の気持ちを分かる、分かろうとすることはとても大切です。そして、責任感がある人が良いです。自分の決めたことは最後までやり遂げる人です。逆に、責任感がない人は困ります。
社会人として持つべき要素を大垣社長は改めて求めていますね。「本屋」だからこその入社する人の特徴はありますか?
やはりみんな本が好きです。しかし、よくマンガしか読まないとか、偏ったジャンルの本に陥りがちです。学生や大学の教授、ビジネスマン、主婦など様々な方が来店されるので、私としては色々なジャンルの本を読んでほしいです。
京都は大学が多いですから、学術書や専門書などを求めているお客さんは比較的多いかもしれませんね。では最後に、大学生にアドバイスをお願いします。
大学時代は色々なことに手を出せる時期なので、何でも興味を持ってほしいです。
「本」に関しても色々なジャンルを読むべきですね。
そうですね。先程も言いましたが、歴史の本しか読まない、SFの本しか読まない。限られたジャンルの本しか読まない人がいますが、もっと多種多様な本を読むべきです。そうすると、幅広い知識や発想が身につきます。そして、「デキる人」は会っている人の数が違います。その“会う”手段のひとつに「本を読む」という方法があります。実際に会うことももちろん良いのですが、人に会い難い世の中では、色々なジャンルの本を読むことで様々な人に頭の中で会い、沢山の考え方に触れてほしいと思います。
「本」を読む、ということは一種の出会いということですね。その出会いの場を大垣書店さんは創っている。大垣社長はとてもかっこいい立命館の大先輩です。本日は楽しい時間をありがとうございました。